加害者と被害者
2010-02-09 Tue 12:28

やってしまった・・・。

昨日、自転車で40分かけて池袋へ向かいました。

アップダウンの激しい山手通り。

くだり坂は、上るための助走をつけるチャンス。

俺は、山手通りをチャリで爆走していると

横から自転車が、すっと出てきた!

急ブレーキの俺!

しかし、間に合わず。

自転車の後輪に俺は真っ直ぐ激突。

時間は止まった。

 

おじさんは、宙を舞っていく

そして、路上で倒れた・・・。

 

とっさの事で、全身が硬直した。

身体は硬くなる。

おじさんは、起き上がらず

呆然としたまま・・・

ややあって、足を押さえ始めた。

山手通りは車の流れも多い。

 

一瞬、去年、俺がタクシーと自転車で接触事故を起こしたことが

脳裏の蘇った。

あの時、俺は被害者だった。

昨日のあの瞬間、俺は加害者になったのだ。

 

怖かった。

おじさんがあまり動かない。

 

慌てて、おじさんを抱きかかえ「歩道に移動しましょう!」と声をかけ

急いで歩道に移動。

おじさんの自転車も歩道に入れる。

その間、おじさんは・・・立っていた。

痛い・・・という顔をして。

でも、立っているという事が、どれほど自分を安心させたか。

 

俺は、気がつけば凄い声で言っていた。

「申し訳ありません!」

「申し訳ありません!」

「申し訳ありません!」

もう、本当に腹の底から声が出ていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

おじさんは「大丈夫です。」と応える。

自転車から落ちた本は、何か勉強しているテキストだった。

そして、鞄から飛び出していたのは食べかけのパンだった。

それをおじさんは急いで鞄に詰め込み

「大丈夫ですから」

と優しく言ってくれた。

 

でも、俺の顔をほとんど見てくれなかった。

大きなショックを受けてる状態だった。

後でヤジが聴こえて来る。

「お前、バカじゃないか!お前が悪いんだよ!信号見ろよ!」

 

自転車に乗って俺を観てる妙なオヤジが凄いヤジを飛ばして来る。

この声は、本当にどうでも良かった。

このヤジが心配なのではなく

俺はただおじさんが「大丈夫」って言ったのが胸に刺さった。

足を痛そうにさすっている・・・。

大丈夫って言う人が、大丈夫なことなんてあんまりないかも知れない。

けど、その声は人を安心させるために存在するんだ。

俺は、おじさんに安心させてもらった。

加害者の俺が

おじさんに安心をもらった。

 

そして、さらにもう一度

「大丈夫ですか、申し訳ありませんでした!」

 

おじさんは、「大丈夫だから」

とまた応えた。

 

そして、おじさんは、自転車にまたがって信号待ちを何食わぬ顔ではじめた。

それは、今起こった被害者と加害者の関係が終わった気がした。

おじさんは、俺を最後まであんまり見ようとしなかった。

きっとショックが大きかったのだと思った。

「失礼します。」

俺はそう言って、池袋まで自転車を走らせた。

 

 

後で、名刺ひとつ置いてくればよかったなぁと思った。

フラッシュバックが頭を何度も過ぎる。

おじさんが宙を舞った瞬間。

本当にふっとんでいた。

スロー再生で何度も頭を過ぎる。

怖かった。

人があんなにも、軽く吹っ飛ぶなんて想像したことがなかった。

自動車事故の実験で人形が吹っ飛ぶのは観たことあるけど

車ではなく、チャリで、チャリであんなふうになるなんて

俺は想像だにしてなかった。

人間って・・・もろいんだ。

 

おじさんのあのショックの顔。

俺をほとんど観ないくらいのショックの顔。

怒りというよりも、静かに頭が空っぽになったような状態。

 

去年、俺が事故に会ったとき

俺もタクシーの運転手をほとんどみれなかった。

ショック状態で、よく分からず、まず劇場に行かなければって思った。

あれは初日前日の朝だった

ふらふらと、自転車のカゴの鞄から落ちた自分の財布と携帯を拾って

劇場に行こうとしていた。

 

おじさんは、あの時の俺の写し鏡。

 

同じ顔をしてたんだ。

 

昨日は、何度もその顔が脳裏に蘇っては消えた。

もし、すぐあとから車が通っていたら?

相手が女性だったら?

相手が妊婦さんだったら?

相手が子供だったら?

・・・怖くなった。

本当に怖くなった。

「もしも」なんてのは考えたらキリがない。

でも、何度も何度もいろいろなコトを想像しては身体を冷やした。

 

やはり、名刺ひとつ置いていけばよかった。

でも、後で損害請求されたらどうしよう・・・と考えた。

保険なんて入ってないから

生きるにただギリギリ以下の俺にできることなんて。。。

正直に言おう。

一瞬、お金が頭を過ぎって怖かった。

治療代くらい払って当然だけど、怖かった。

俺がチャリで40分かけて池袋まで行く理由は、お金なのだ。

 

それもまた、後悔として残った。

おじさんは、そんな請求するそぶりも見せてなかったけど。

 

おじさん、本当にすみません。

 

振り返ると

あんなに、無我夢中で謝罪したことがないくらい

俺は声に出して謝っていた。

こんな素直に出た謝罪は、これまでの俺にないかもしれない。くらいに。

心と身体が凄いリンクしていた。

これも俳優訓練のたまものと言えばそうなんだろう。

そんなバカなコトも考えた。

そう言えば、去年の事故でタクシーの運転手の謝罪は

声が震えていた。

現実感のない声で、ふわふわとしてた。

頭ヒトツ下げられてなかった。

「やっちゃったぁ」という感じだった。

その後、そのタクシーの運転手とは会ってはない。

警察で個別の事情聴取があった。

タクシー会社の偉い人が来た。

保険会社の人が電話で応対した。

あとは治療費をもらった。

本人から明確な言葉をもらってない。

今考えれば、なんだったんだろう。

 

そんなタクシー会社から買って貰った自転車で

俺は今度は加害者になってしまった。

ほんっとバカだなぁ。

バカというのは、俺の事を言うのだ。

 

おじさんが、その日、「今日自転車に衝突されてさぁ~」

って笑い話のように人に誰かに話せてればいいな、と願ってます。

 

先日の名古屋で起きた、ひき逃げ事件。

親子3人の死亡。

そんなニュースが急にトゲトゲしく深く刺さる。

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